理事長挨拶

更新日:2021年11月17日

森下竜一理事長

日本遺伝子細胞治療学会(JSGCT)の
会員並びに関係者の皆様

 この度日本遺伝子細胞治療学会は、一般社団法人として新たにスタートすることになりました。それに伴い、旧日本遺伝子細胞治療学会において私が理事会におきまして理事長に選出され就任し、一般社団法人としての発足に伴い、引き続き理事長を務めさせていただいておりますので、ご挨拶申し上げます。
 本学会は、1994年に日本遺伝子治療学会として設立され、当該領域では世界でも最も歴史の古い学会のひとつです。3代目理事長の藤堂具紀先生のもと一般社団法人化を目指し、活動してまいりましたが、この度無事一般社団法人として発足することになり、私が初代理事長として就任いたしました。旧学会においては、初代理事長の浅野茂隆先生が日本における遺伝子治療学を確立させ、2代目理事長の金田安史先生のもと2015年に日本遺伝子細胞治療学会と改称され、アカデミアのみならず社会的にも幅広い認知を獲得するに至っております。3代目理事長の藤堂具紀先生におかれましては、更に本学会を発展させ、社団法人化への道筋をつけていただいたことに、学会員を代表して感謝申し上げます。

 さて、皆様ご存じのように遺伝子細胞治療は、近年新薬が相次いで欧米で認可され、国内においても血管再生遺伝子治療薬、血液がんに対するCAR-T療法、単一遺伝子疾患に対するアデノ随伴ウイルスベクター製品、がんに対するウイルス療法などが再生医療等製品として実用化されました。また、ビオンテック社やモデルナ社が新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを実用化し、国民の70%以上の方が接種を受けております。これらのワクチンの技術は遺伝子治療技術をベースにしており、遺伝子治療が世界で数億人の方に実施された記念すべき年に、期せずしてなりました。これらの動きを受け、今後世界の巨大製薬企業を始めとする数々の企業のみならず、世界各国の政府が、ワクチン・創薬のターゲットとして遺伝子細胞治療に向けた開発競争を支援し、一層競争が加速しております。今後、更にゲノム編集などの技術革新も更にこの動きを加速していくでしょう。

 そのような動きの中で、本学会の果たすべき役割は従来とは比較にならないほど大きくなってきております。新型コロナウイルスに対するワクチン開発には、アカデミアやスタートアップ発の技術が基盤になっています。欧米と日本との違いは、皆さんのご存じのように資金や規制ハードルなど大きな違いがありますが、その中でも日本オリジナルの遺伝子細胞治療開発を進めていく必要があります。社団法人化に伴い、本学会では産学連携や規制への提言、人材育成など日本の科学技術力を高めていくための活動を今まで以上に取り組んでいきたいと思います。
引き続き関係者皆様のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2021年11月17日

一般社団法人 日本遺伝子細胞治療学会(JSGCT)
理 事 長 森下 竜一
大阪大学大学院医学系研究科
臨床遺伝子治療学寄付講座 教授