理事長挨拶

更新日:2025年8月3日

米満 吉和 理事長

一般社団法人
日本遺伝子細胞治療学会(JSGCT)
会員ならびに関係者の皆様

 2025年度第1回JSGCT理事会にて選挙理事の皆さまのご推挙を賜り、森下竜一前理事長の後任、一般社団法人第2代理事長(任意団体発足以来5代目)として過日就任させて頂きました。ここにJSGCT理事・評議員・会員ならびに関係者の皆さまに厚く御礼を申し上げますと共に、新任のご挨拶をさせて頂きたく存じます。

 本学会は、北海道大学にて日本初の遺伝子治療臨床研究が実施された1995年に日本遺伝子治療学会(JSGT)第1回学術集会が開催され、今年で30年を数える歴史と伝統のある学会であり、国際的に最も早く設立された遺伝子治療の専門学会の一つです。
 1990年代は遺伝子治療への大いなる期待の時代、世界では遺伝子治療の臨床開発が盛んに行われました。一部で有効性を示唆するデータが出て来つつあるまさにその時、1999年のアデノウイルスベクター過量投与による死亡事故、2002年のフランスにおけるレトロウイルスベクターに起因する複数患者における白血病の発生を契機に、遺伝子治療は長い冬の時代に入りました。JSGTの会員数も200名程度と激減・低迷し、遺伝子治療研究にはほとんど競争的資金が付かないという困難な時代です。これは米国も同様で、CAR-T療法のパイオニアであるCarl June教授(ペンシルバニア大学)も、「この頃、NIHからの研究資金獲得は極めて困難だった」と述懐しています。

 この冬の時代を世界の研究者はようやく乗り越え、2010年代後半になり様々な遺伝子細胞治療が、上市製品として医療現場へ続々と投入される時代になった訳です。特にこの20年は、困難な時期においても粘り強く研究が進められた成果として、ベクターの臓器・細胞選択性の向上、治療効果を高めると同時に、副作用を低減するためのいくつかの技術的なブレイクスルーが生まれました。その結果、特に単一遺伝病や血液腫瘍については、これまでとは比較にならない、劇的な治療効果が期待出来る疾患が徐々に増えて来つつあります。

 森下前理事長はこの重要なタイミングを機敏に捉え、研究の推進のみならず医療現場そして社会の期待に応えることが出来る学会へと、大きな機構改革を断行されました。その成果の一つがJSGCT認定制度です。この認定制度は遺伝子治療特有の医療現場におけるいわゆるカルタヘナ法対応、そして副作用マネージメント等の専門家を養成することが目的です。現在は医師・歯科医師に限定されていますが、委員長の福原浩理事の下、施設認定等への拡大、そしてそのための教育プログラムが検討されており、今後数年で実現されることでしょう。また昨年は、遺伝子細胞治療をより健全に医療現場へ定着させ、関連医療行為に対する診療報酬化を円滑に行うため、内科系学会社会保険連合にも加盟しました。その一方で、複数の上市製品が医療現場へ投入されている現在においても、遺伝子治療特有の重篤な副作用は今なお大きな課題です。特に免疫反応に起因する臓器傷害や、遠隔期におけるdelayed adverse eventsは、今後も重要な研究課題となるでしょう。

 国際的には、JSGCTはCoalition of International Gene Therapy Societiesの主要メンバーとして、欧米各国の遺伝子治療関連学会とのcollaborationをスタートしました。これには、①多国間における遺伝子治療の承認を迅速化するため、各国の規制や法整備を働き掛ける、②若手研究者育成の促進、という大きな2つの目的があります。ここでJSGCTは、ASGCT、ESGCTと共に中心的役割を果たすことが期待されています。

More Science, for Better Safety and Outcomes
より安全かつ効果的な遺伝子細胞治療の実現のため、なお一層サイエンスを磨く場でありたい。

そしてその高いレベルのサイエンスをベースに、より社会に開かれた総合医学会として、JSGCTは更に前へ歩みを進めて行きます。
関係各位のこれまで以上のお力添えを、どうか宜しくお願い申し上げます。

2025年8月3日

一般社団法人 日本遺伝子細胞治療学会(JSGCT)
理 事 長 米満 吉和
九州大学大学院薬学研究院・教授