遺伝子治療を受ける患者さんならびにご家族の方々へ

日本遺伝子細胞治療学会(JSGCT)からの注意喚起

更新日:令和元年 (2019) 8月13日

 

世界で遺伝子治療の臨床研究が開始されて約30年が経過しました。最近では、対象疾患で治療効果が認められ薬として国に承認される製品が日本・米国・欧州でも出てきており、がんや難病の治療法として今後の医療に大きく貢献すると期待されます。一方で、これまで、遺伝子治療に伴う副作用が報告されているのも事実です。中でも、海外の事例ではありますが、1999年、先天性オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症の患者さん1名が、大量のアデノウイルスベクター投与によって死亡したケース、2002年免疫不全症の患者さん数名が、レトロウイルスベクターで遺伝子導入した造血幹細胞投与を受けた後数年を経て、白血病を発症し不幸にも亡くなられたケース、などは遺伝子治療研究に携わるものとして重い教訓としなければなりません。

 遺伝子治療技術の進展、開発研究の進捗により、2019年7月現在、10を越える遺伝子治療製品が医薬品として承認されるに至っており、中国ではGendicine(頭頚扁平上皮がん)、Oncorine(鼻咽頭がん)が、フィリピンではRexin G(膵臓がん、乳がん、肉腫)が、ロシアではNeovasculgen(血管重症虚血肢)が承認されています。一方、欧州もしくは米国では、Glybera(リポ蛋白リパーゼ欠損症、薬価などの問題で販売中止)、Imlygic(悪性黒色腫)、Strimvelis (ADA欠損症)、Luxturna(遺伝性網膜ジストロフィー)、Kymriah(難治性白血病)、Zolgensma(脊髄性筋萎縮症)、Zynteglo(サラセミア)などが承認に至っております。欧州・米国で承認された製品につきましては、その安全性、有効性について十分な基準で審査されており、日本でも国際調和を重視し同等の基準が採用されております。しかしながら、それ以外の国で承認されている製品につきましては、その国独自の承認基準が適用されており、日本・米国・欧州の安全性、有効性の基準を満たさない可能性があることは注意すべき点です。

 我が国でも2019年にキムリア(前出のKymriah:難治性白血病)とコラテジェン(Collategene、国内開発品、条件及び期限付き承認:慢性動脈閉塞症)が承認されました。ただ、遺伝子治療は、多くの基礎および臨床研究に基づき着実な進歩を遂げているものの、医薬品としてはまだ生まれたばかりの治療法であり、社会の理解をもって健全に発展する為に、その臨床試験においては倫理面での十分な配慮が必要です。そのため我が国で遺伝子治療の臨床試験を実施する際には、国が定めた指針、法律にしたがって行なう必要がありますし、医薬品とするためにはさらに治験を行い、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査を受けねばなりません。日本遺伝子細胞治療学会は、1995年の設立当初より、“科学的・医学的な根拠に基づき、また倫理性を深く考慮しつつ、厳正な審査体制と社会への情報公開のもとで臨床研究や治験を行って遺伝子治療を進める”、という方向性を強く支持し、それに携わる医師や研究者を支援し、時代に即した体制の整備にも努めて参りました。

 欧州もしくは米国で承認された製品や国内で開発されている製品は、国内での治験を経て、遠くない将来に日本でも承認される可能性があります。しかしながら、それ以外のものは、今後日本の基準で承認される可能性が現時点で高いとは言えません。日本で承認されている前述の2製品以外はすべて、本邦では未承認薬の位置づけです。にもかかわらず現在、このような未承認薬が、臨床研究や治験という本邦での開発に必要な過程を経ずに、一部の医療機関から患者さんに直接投与されている事実があり、日本遺伝子細胞治療学会は本件に関して、強い懸念と深い憂慮をいだいております。

 これらの未承認薬を用いた遺伝子治療を受ける方々は、ご自分が受ける遺伝子治療の安全性や有効性等について十分ご理解をされ、そのうえで受けるかどうかの判断を慎重に行われるよう、また法外な医療費を請求されるケースもあることが一部で指摘されていますので、医療費が適正かどうかについても十分考慮して判断されますよう、強くお勧めいたします。治療を受けるご決断をされる前に、それを勧める医師に、海外承認国におけるその薬の適応や薬効をご確認頂き、さらに未承認薬のために生じる疑問等をお尋ね頂いた上、場合によってはセカンドオピニオンを日本遺伝子細胞治療学会宛にお求め下さい。日本遺伝子細胞治療学会は 誠意を持ってお答え致します。また本学会へのお尋ねに関して費用は一切かかりません。

 その他にも、ご自身の受けられる国内外の遺伝子治療や関連事項に関しまして疑問等をお持ちの場合には、学会としてご相談に応じます。また医療関係者の方々からのご相談にも対応いたします。ご相談のある場合には 下記の日本遺伝子細胞治療学会事務局へ電子メールでご連絡頂けましたら幸いです。

日本遺伝子細胞治療学会 理事一同 

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