ご 挨 拶 |
この度,日本遺伝子治療学会の年次学術会長をつとめさせて頂き,大変光栄に思い,また,重責も感じております.ご周知のように,本学会は,米国に比べて取り組みが著しく遅れた我が国の遺伝子治療に関する基礎的,臨床的研究を効率よく適正に推進していくことを目的に既存の形式にはとらわれず若い基礎研究者と臨床研究者の皆様が中心となって運営されており,広く世間の関心を集めると同時に,多くの研究者がその発展を期待しております.今年で発足してから5年を経過したことになりますが,その期待に違うことなく大変理想的な形で発展しておりますことを,会員の皆様方とともに,心からお慶び申し上げる次第であります.また,実際に運営に携わってこられた幹事の方々は大変だったと思うと同時に,払われた御労苦に厚く御礼を申し上げたいと思います. |
会員数と応募演題数は,回を重ねる毎に少しずつ増加しており,今回は,その数はそれぞれ約800名および136題に達しました.学会の趣旨に基づいて今回も応募演題は厳正に評価され発表演題は選択されておりますが,全体的に質は非常に高くなっており採用不可と判断される演題は皆無であったと聞いております.また,外国からの演題応募も徐々ではありますが増えつつありますので,近い将来は会期もさらに伸ばさなくてはいけなくなるのではないかと感じております.そのために今後学会費も上げざるを得なくなるかもしれませんが,当初より会員のすべての方々が求めておられることは我が国からの国際発進でありますから,これはむしろ嬉しい悲鳴であろうかと思っています.さらに,社会の強い関心に応えるべく昨年度の会長である豊島久真男先生によって始められた公開シンポジウムについても今回で2度目になりますが,今度は‘ベクターの安全性検定’というタイトルで米国のベンチャー企業や厚生省の方々のご意見も含めて拝聴しみんなで考えることに致しました.率直で建設的な意見の交換が出来るように期待しております. |
最後に一言,なかなか効果が明確にならないと言われてきた遺伝子治療ですが適応疾患が広がることで一部の疾患では明かりが見え,また,我が国でも遺伝子治療臨床研究が漸く本格的に行われるような雰囲気になってまいりましたが,それらを含め遺伝子治療はまだまだ実用的な治療法とは言えません,遺伝子治療臨床研究にあたってはすべての面で慎重さを決して欠かないこと,および,学術集会での活発な論議が新しいアイディアを生む契機になりますこと,を心から願っています. |
第5回日本遺伝子治療学会総会 会長 三輪 史郎 |